ビルボの石のトロル
「ホビットの冒険」で記録されている通り、ビルボ・バギンズの冒険は、トロルの森として知られる場所で彼とその仲間がバート、トムとウィリアムという3人のトロルに遭遇することによって、危うく終わりかけたのである。そして、ビルボとドワーフたちは、辛くも飢えたトロルの餌食にされるところを、ガンダルフの介入によってその危機を脱した。ガンダルフがトロルの声真似をし、ホビットとドワーフの最も美味しい調理方法についてごたごたけんかをさせ、その場から気をそらさせたのだった。そして、日が昇る中、夜明けの光は、結論に至らずごたごたけんかを続けていたトロルを石に変え、その石は今も変わらず同じ場所に立ち続けている。現今、さびし野を抜ける大東街道からさほど遠くないトロルの森を冒険する者は、あの愚かなトロルがさすらいの魔法使に騙されてから70年以上経つ今も、まるで生きているようなその3つの像に遭遇することとなる。しかし、旅の者は、太陽の効力を恐れなくなった、より大きくて凶悪なトロルの種が存在するという昨今の噂を知っておくが良い。その静寂な木陰はバート、トムとウィリアムの哀れな最期を見届けるという愉快な瞬間を与えてくれるかもしれないが、用心するべし。不用心な者にとっては、この先のトロルと冒険者との出会いは、必ずしも万事うまくいくとは限らないのである。
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